第1回(全3回):給料を上げても「やる気」が出ないのはなぜ? 〜ハーズバーグの理論で解く誤解〜

こんにちは。 日頃、多くの介護・福祉経営者様のご支援をさせていただく中で、皆様が職員の処遇改善や労働環境の整備に、並々ならぬ努力をされていることを強く感じています。

2024年度の介護報酬改定でも処遇改善が大きなトピックとなり、給与アップに取り組まれた事業所様も多いことでしょう。

しかし、経営者様から、こんなため息交じりのご相談をいただくことがあります。 「給料も上げたし、休みも取りやすくした。以前よりずっと働きやすいはずなのに、職員の目が輝いていない。それどころか、まだ不満があるようだ……」

実はこれ、心理学的に見ると「当たり前」の現象かもしれません。

今回は、組織づくりのヒントとなる「ハーズバーグの動機付け衛生理論」をご紹介します。少し難しそうな名前ですが、中身はとてもシンプルで、現場のマネジメントにそのまま当てはまるお話です。

■「不満がない」と「満足している」は別モノ

アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグは、仕事に対する満足度は、一つの物差しでは測れないと提唱しました。彼は要因を以下の2つに分けています。

  1. 衛生要因(不満を解消する要素) 給与、人間関係、労働条件、福利厚生など。 これらが不足すると職員は「不満」を感じます。しかし重要なのは、これらを完璧に満たしても、不満がゼロになるだけで、「やる気(プラス)」にはならないのが特徴です。
  2. 動機付け要因(満足を高める要素) 達成感、承認(褒められること)、仕事そのもののやりがい、責任、昇進など。 これらが満たされることで初めて、人は「もっと頑張ろう」「この仕事が好きだ」というプラスの意欲を持ちます。

■「働きやすさ」だけでは片手落ち?

介護業界全体で進んでいる処遇改善やICT活用による業務負担軽減は、主に「衛生要因(働きやすさ)」の改善です。これは離職を食い止めるための土台として絶対に必要です。

しかし、土台を作っただけでは家は建ちません。そこに「働きがい(動機付け要因)」という柱を立てなければ、職員は「この職場に不満はないけれど、ここで頑張り続ける理由もない」という状態になってしまうのです。

次回は、まだ実施していない事業所様も多い「ES調査(職員満足度調査)」について、なぜ今それが必要なのか、どう活用すべきかをお話しします。