「人が辞めない職場」の作り方【第2回】

介護・福祉事業所の経営者・管理者の皆様、こんにちは!

「人が辞めない職場」の作り方、第2回目をお届けします。

前回(第1回)は、最新のデータ(令和5年度 介護労働実態調査)から、介護業界の離職率は13.1%と、実は全産業の平均(15.0%)より低いという意外な事実をご紹介しました。

「介護だから辞めても仕方ない」は、もはや当てはまりません。 では、なぜ職員は職場を去ってしまうのか?

今回のテーマは、多くの経営者様・管理者様が薄々気づいていながらも、なかなかメスを入れられずにいる「あの問題」です。

離職理由の第1位は「給与」ではない

同調査で、介護職員が職場を辞めた理由を見てみると、驚くべき事実が浮かび上がります。

「収入が少なかったため」(16.6%)を大きく引き離し、ダントツの第1位(34.3%)となった理由。

それは…… 「職場の人間関係に問題があったため」 です。

経営者様からすれば、「給与はすぐには上げられないが、人間関係なら…」と思われるかもしれません。 しかし、この「人間関係」こそが、最も根深く、最も職員の心を疲弊させる原因となっているのです。

「人間関係が悪い」とは、具体的に何か?

この調査では、さらに踏み込んで「人間関係の問題」の中身も聞いています。

  • 「上司の思いやりのない言動、きつい指導、パワハラなどがあった」(49.3%)
  • 「上司の管理能力が低い、業務指示が不明確、リーダーシップがなく信頼できなかった」(43.2%)
  • 「同僚の言動(きつい言い方・悪口・嫌み・嫌がらせなど)でストレスがあった」(38.8%)

胸が痛くなるような数字です。 職員は、利用者様へのケアで疲弊する前に、職場の「内側」で疲弊し、辞めていっているケースが非常に多いのです。

管理者・経営者が今すぐできる「3つのアクション」

この問題は、裏を返せば、経営者・管理者の「本気度」次第で必ず改善できる、ということです。 「風土」や「雰囲気」といった曖昧なものではなく、具体的な「仕組み」として取り組みましょう。

アクション1:「聞く時間」を強制的に確保する 「忙しくて話を聞く時間がない」は、職員から見れば「上司は自分に関心がない」と受け取られます。

  • 1回5分の「立ち話ミーティング」: 業務の合間に「最近どう?」「困ってることない?」と声をかける時間を、スケジュールに組み込んでしまいます。
  • 「言える化」の徹底: 職員が「こんなこと言ったら怒られるかも」と感じている時点で、風通しは悪化しています。管理者様から「小さな問題ほど早く教えてくれて助かる」というメッセージを、会議や朝礼で繰り返し発信し続けることが重要です。

アクション2:「ハラスメント」のラインを明確にする 「昔はこれくらい普通だった」は、今の時代には通用しません。

  • 「それ、アウトです」研修の実施: 何がハラスメントにあたるのか、外部講師を呼ぶなどして全職員で学ぶ機会を設けます。「うちは大丈夫」という思い込みが一番危険です。
  • 管理職自身の言動チェック: 何より、管理者様ご自身が「思いやりのない言動」をしていないか、常に振り返ることが最大の抑止力になります。

アクション3:「お互い様」を「見える化」する ベテランと新人、介護職と看護職など、立場の違いが軋轢を生むことはよくあります。

  • 業務の「クロスレビュー」: 「なぜあの人はいつも忙しそうにしているのか」「なぜこの作業が必要なのか」を、お互いの業務内容を発表し合う(知る)ことで、リスペクトが生まれます。
  • 「ありがとう」を仕組み化する: サンクスカードの導入など、小さな感謝を「見える化」する仕組みは、ギスギスした空気を和らげるのに想像以上の効果を発揮します。

【第2回 まとめ】

職員が辞める最大の理由は「人間関係」。 そして、その人間関係を良好に保つ「風土」や「仕組み」を作ることは、間違いなく経営者・管理者様の最も重要な「仕事」の一つです。

「うちは雰囲気がいいから」と安心していても、職員は不満を口に出さずに、ある日突然、退職届を持ってくるものです。

さて、職員が定着するために必要なのは、「良好な人間関係」という土壌だけではありません。 その土壌の上で、「ここで働き続けたい」と思える「未来への希望」も不可欠です。

次回は、その「希望」の作り方、「キャリアパス」や「働きがい」といったテーマについて深掘りしていきます。