こんにちは。 日々の施設運営や現場管理、本当にお疲れ様です。
現場のスタッフさんから、こんな悩みを相談されることはありませんか? 「利用者様が入浴を断固拒否される」 「リハビリになかなか前向きになってもらえない」 「転倒リスクがあるのに、一人で立ち上がろうとしてしまう」
立ち上がろうとする場面は本当によくあるシーンだと思います。私自身、現場にいるとよく目の当たりにします。
そんな時、安全を守らなければならない現場だからこそ、つい強い言葉で制止したり、正論で説得しようとしたりして、お互いに疲れてしまう。そんな悪循環は、どの事業所でも起こりうる課題です。
今日は、ベストセラー書籍『伝え方が9割』の技術を応用して、介護現場の空気を劇的に変える「言葉の選び方」についてお話ししたいと思います。
■現場で多用されがちな「恐怖」のデメリット
同書には、相手に「イエス」と言ってもらうための切り口がいくつか紹介されています。その中に「嫌いなこと回避」という技術があります。
これは、「芝生に入らないで」と伝える代わりに「芝生に入ると、農薬の臭いがつきますよ」と伝えるような、相手のデメリットを提示して行動を促す方法です。
介護現場に置き換えると、これです。 「座っていてください! 立ち上がったら転んで骨折しますよ!」
確かに命を守るためには必要な場面もあります。しかし、昨今の介護ニュースでも頻繁に取り上げられる「高齢者虐待防止」や「スピーチロック(言葉による拘束)」の観点から見ると、この伝え方ばかりに頼るのは危険です。何より、言われた利用者様は「怒られた」「怖い」というネガティブな感情を抱き、スタッフへの信頼関係が揺らいでしまいます。この感情は徐々にその人自身を、そしてそのフロアや施設全体に伝染していきます。
では、どうすればよいのでしょうか? ここからは、ネガティブな回避ではなく、相手の心がポジティブに動く「変換テクニック」を具体例とともにご紹介します。
■1. 「イエス」に変える7つの切り口の1つ「選択の自由」で自尊心を守る
人は「命令」されると反発したくなりますが、「自分で選んだ」と思うと納得して動けるものです。
【入浴拒否のある方への声かけ】 ×「お風呂に入ってください」 ↓ ◎「ヒノキの香りの入浴剤と、バラの香りの入浴剤、今日はどちらにしてみますか?」
「お風呂に入るか、入らないか」という対立構造から、「どっちの楽しみを選ぶか」という視点に変えることで、スムーズな誘導が可能になります。
■2. 「イエス」に変える7つの切り口の1つ「認められたい欲」を刺激する
誰しも、いくつになっても「誰かの役に立ちたい」「認められたい」という思いを持っています。特にリハビリや活動への参加を促す際に有効です。
【レクリエーションに参加しない方への声かけ】 ×「機能訓練のために、体操に参加しましょう」 ↓ ◎「〇〇さんが来てくださると、場が明るくなって皆さんも喜ぶんです。お願いできませんか?」
「あなたの存在が必要です」と伝えることで、重い腰を上げてもらえる可能性が高まります。
■3. 「イエス」に変える7つの切り口の2つ「感謝」と「あなた限定」の合わせ技
これは、認知症の方への対応でも非常に効果的なテクニックです。「指示」ではなく「お願い」と「感謝」ベースで伝えます。
【帰宅願望があり、出口へ向かう方への声かけ】 ×「そっちは出口だからダメです、戻りましょう」 ↓ ◎「〇〇さん、いつもありがとうございます。実はいま、美味しいお茶が入ったので、〇〇さんに一番に毒味(味見)をしていただきたいんです。こちらへお願いできますか?」
「帰らないで」と制止するのではなく、別の魅力的な目的(相手の好きなこと)を提示しつつ、特別感(あなた限定)を出して感謝を伝えます。
■ポジティブな言葉は、スタッフのメンタルも守る
いかがでしょうか。 「嫌いなこと回避(転びますよ!)」は即効性があるように見えますが、使いすぎると現場が殺伐とします。
一方で、相手の「好きなこと」や「認められたい欲」にフォーカスした言葉選びは、言っているスタッフ自身の気持ちも穏やかにします。
2024年の介護報酬改定でも、尊厳の保持や自立支援がより一層強く求められるようになりました。 「どう伝えるか」を少し工夫するだけで、利用者様の笑顔が増え、結果としてスタッフの業務負担も軽くなる。そんな好循環を作り出したいですね。
伝え方が9割は漫画版も出ていてスルスル読めるのでお勧めです。今回は介護の現場での活用方法として紹介しましたが、実生活でも役に立つ「イエス」に変える7つの切り口が解説されていますので是非読んでみてください。
